麻酔科医になってみた。

臨床研修無事終了とともに、麻酔科医の道へ。

第113回医師国家試験 ~新しい医師の誕生~

2019年2月9日・10日で第113回医師国家試験が行われ、1万人を超える医学生が受験した。私の国試の記憶は薄れつつあって、当時の感覚や臨場感をそのまま思い出すことはできなくなってしまったが、それでも、本当につらく苦しい1年間で、もう二度と経験したくないと心の底から思う。

 

今年は妹が受験生だったこともあり、より当時に近い気持ちで合格発表を待っていたようにも感じるが、妹はその何倍も緊迫した思いでいたのだと思う。今年一年は特につらく、しんどい1年で、それでも国試合格を目標に、目の前の壁を一つ一つ乗り越え、七転び八起きの精神でとにかくあきらめず前だけを向いて駆け抜けたこの1年は一生記憶に残るだろうし、何よりも自分の自信になることと確信している。

 

姉として、妹である、そして後輩である彼女にできることは一番近くで見守り励ますこともそうだが、ときには現実的な目線から厳しく叱咤激励することでもあった。「そんなんじゃだめだ。あなたならもっと出来る。今こそ踏ん張らなくていつ踏ん張る!」と妹の精神力を信じていたからこそかけたかなりきつい言葉もあった。しかし妹はその厳しい言葉に屈したり反発したりすることなく、真摯に受け止め一大奮起し緩んだ手綱を締め直してまた勉学に励んでいた。そんな姿を見て、こんなにも真剣な妹を見たのが初めてだった姉の私は、妹がとても誇らしくまた、合格を確信していた。だから国家試験当日を迎えたとき、合否の心配は全くしておらず、寧ろ家族に医師が増えるのがただ楽しみで仕方なかったのを覚えている。

 

彼女の努力が報われ妹は見事国試に合格し、我が家には新たな医師が誕生した。ここに至るまでの年月は紆余曲折で、家族の絆を試されることもあったが、両親の支えと私たち子どもに注がれる無償の愛、全力応援、そして妹の素直さと絶対にあきらめない根性があったからこそ手にすることができた、家族全員で勝ち取った合格のように感じる。

合格の第一報を聞いてほっとした両親は、娘の前でいることを忘れたかのように大粒の涙をほろほろ流したという。

 

なんでも私のまねっこをする可愛い可愛い妹へ

 

これから待つ医師としての人生は、長く険しい道で、必ずしも楽しくいいことばかりではないと思う。たまには歯を食いしばって耐えなければならないこともある。しんどくて泣きたくなることもある。それでも、いままで机上で得た知識を臨床に応用することの楽しさと、自分の力で患者さんを助けることができた、前よりもいい環境にすることができたときの気持ちというのは何物にも代えがたく、医師としてのやりがいを全身で感じるだろう。

そんな中で私が毎日痛感するのは、謙虚な心を持ち続けることの大事さと難しさだ。

誰しもがゼロからスタートし、失敗と挫折を繰り返し、多くの人に迷惑をかけながら経験し、学び、成長していく。その成長こそが自分の自信になっていくものだが、自信と驕りを決してはき違えてはいけない。私が今医師として、麻酔科医として働けているのは、祈ることしかできないと一番近くで全力で応援し続けてくれた家族、お前なら出来ると背中を押し続けてくれた恋人、一緒に頑張ろうぜと歩幅を合わせてくれた友人、めちゃくちゃなことを言う一生徒の無理を可能にしてくれた教師たち、こんなポンコツ医師に毎日懲りずに付き合ってくれた患者さんとそのご家族、こんな私を医師として雇ってくれそしてまだ医師として働かせてくれている病院、挙げ始めればきりがないほどの人々を巻き込んでやっと医師として今働けている。私が彼らに恩返しをする方法は、毎日の麻酔を真剣に丁寧にかけ、患者さんによい医療を提供するという形で還元することである。そのために毎日勉強し、知識をつけ、今日よりよい自分に明日なっていなければならないと考えている。

だから妹よ、たくさん失敗して、たくさん迷惑をかけて、そこからたくさんのことを学んでほしい。そして今まで支えてくれた人たちに感謝の気持ちを伝えるべく、患者さんに最高の医療を提供できる医師になってほしいと思う。それこそが自分が目指す医師になるための近道だとも思うから。

 

最後に

あなたのお手本になれるようないいお医者さんになるにはまだまだ何もかもが足りない私だけど、私もあなたと一緒に成長していけたらと思う。

 

国試合格おめでとう。本当によく頑張ったね。これからは同じお医者さんとしてよろしくね。

 

破天荒で迷惑ばかりかけている姉より