麻酔科医になってみた。

臨床研修無事終了とともに、麻酔科医の道へ。

第112回医師国家試験

先週末の2018年2月10日と11日に第112回医師国家試験が行われました。

2日間、400問に変更になってはじめての国試。まずは全国の受験者のみなさま、本当にお疲れさまでした。

 

国試は今でこそ良い思い出として振り返られますが、受験している本人は必死で、張り詰めた空気感の中、毎日不安を抱えながら、負けそうになる自分と戦い続けた3日間だったように思います。

 

国試の準備にふけった医学部6年生の1年間はまるでブートキャンプにでも入れられたかのような1年でした。朝は9時から授業、それが終われば学校で22時まで自習。そのあと家に帰りひとやすみしてから1時まで復習の毎日。それまで、テスト前以外はろくに机にも座らず、勉強をしてこなかったわたしにとっては拷問のような日々でした。

 

“打倒国試”、“打倒卒試”を目標として掲げ勉強し続けた1年間。わたしがなにより恵まれていたのは、絶対に一人ではなかったということ。毎日同じ部屋で勉強し、分からない問題を質問しあい、教えあい、不安な気持ちをこぼせば励ましあい、ああでもないこうでもないと話し合いながら立ちはだかる壁を一歩一歩一緒に乗り越えていった『戦友』たちがわたしにはいました。つらい、しんどい、もういやだ、受かる気がしない、自分の学力が国試に通用するのか不安。どこにぶつければいいのかわからない絶望に近い気持ちを吐き出しては、「わたしも」と、自分だけが不安でしんどいわけではないことを教えてくれ、つらい気持ちを共有することができました。この共有こそが、国試から2年たった今でも鮮明に『よき思いで』としてわたしの記憶の中にしまってある理由だと思います。

 

そんな私も今となっては研修医2年目、楽しい時が流れるのは速いもので、来月で初期研修を修了しようとしています。研修医としての日々は、世間からは少し遅れてやってきた社会人としての第一歩であり、責任と大人としての自覚を問われる厳しい日々てあるとともに、新しい発見と出会いに満ちたとても充実した日々でもあります。医学生が『医者の卵』であるならば、研修医は『孵化したてのひよこ』みたいなもので、右も左もわからない、ひとりでは何もできない、要は上級医の『お荷物』です。そんなわたしたちに対して、「わからないことはかたっぱしから聞けばいい。知らなくても当然とみなされるのは研修医の特権だぞ。」と懲りずに優しく指導してくれた上級医の先生には、ほんとうに感謝しかありません。「研修医時代があるから、今がある。絶対に通る道だから。」と、20年目の先生は言いました。「自分が教えられることは、全部教える。だから、盗め、研修医。」と。先生方がいたから、今のわたしがいます。だから、わたしもこれからつづく研修医たちにも上の先生方がしてくれたように、彼らの「はじめて」や「どうして」に寄り添ってあげられればとこころの底から思います。

 

研修が始まった時点で自分が進む科をすでに決めている人はごく少数で、ほどんどは自分が何科に進むのかを迷いながらローテートしています。わたしもその一人でした。学生の頃に一通りの科を2週間ずつ実習で回ったときに、内科肌ではないことは薄々感じており、かつ、長時間に至るオペや、日夜病院に呼び出されるようないわゆる“ハイパー”な科ではとても働ける気がしなかったので、なんとなく、乳腺外科、産婦人科、形成外科あたりを候補にあげてローテートしていました。といっても、興味がある科だけを回れるわけでもなく、救命救急科や、内科、麻酔科など必修で回らなければいけない科がわたしの病院では決まっていました。面白いもので、自分が全く興味もなかった科でこそ、記憶に残る症例を経験したり、より多くのことを学べたりします。絶対に自分が進まないと思っていた内科で、たくさんの疑問を抱き、一番多くのことを学んだのも事実です。何科であろうど、実際にローテートしてみないと何もわかりませんが、いろんな経験をして、たくさんの先生や同期の話を参考にし、雲がかっている未来を想像しながら少しずつ自分の進む道を決めていくのは、とてもわくわくするものです。

 

来年度の4月から、わたしは麻酔科に入局します。初期研修が始まった時は、麻酔科なんて1mmも考えていなかった科に自分が進む決意をする運びになったことに驚きと、自分らしさを感じています。見た目だけじゃ、何も決められません。ぜひ、いろんな科をローテートしていろんな経験をしてください。やりたいこと、向いてること、なりたいものを突き詰めてていくときっと、自分が進む道が見えてくるはずです。

どの科に進んでも、失敗ではありません。出会いと、経験があるのみです。

全ての出会いを大切に、経験を大切にしながら、自分の未来を見極めていってください。

 

では、もうすでに始まっているであろう、人生の中でもう二度とおとずれない最高の2カ月を目いっぱい羽を伸ばして存分に楽しんでください。わたし自身、この2カ月以上に最高だった思い出は人生の中でありません。

 

本当に、6年間、お疲れさまでした。